2018年4月14日土曜日

【速報】【経過観察問題(4)】国破れて記憶あり、で症例数を隠ぺいする被告福島県にはこれを開示する説明責任がある(2018.4.13)

これまでの【経過観察問題のまとめ】は以下を参照。
被告福島県と甲状腺検査の経過観察問題(2018.1.28)

4月13日、子ども脱被ばく裁判で、甲状腺検査の経過観察問題で症例数を隠ぺいする被告福島県に対し、症例数を開示する説明責任があることを主張・立証する書面(準備書面52)を提出しました。

【おさらい】 
経過観察問題とは、・・・
2017年3月、NPO法人「3・11甲状腺がん子ども基金」の会見で、福島県は県民健康調査の甲状腺の二次検査で「経過観察」とされた子ども2523人(同年10月では2881名)は、その後「悪性ないし悪性疑い」が発見されても、その数を公表していなかった事実、つまり福島県が公表した196人(2017年12月末時点)の患者以外にも未公表の患者、会見では事故当時4歳の男児がいることが判明。
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これに対し、子ども脱被ばく裁判の原告らは、被告福島県に対し、 速やかに、その症例数を明らかにするように裁判で求めた。
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被告福島県の答弁
「 『経過観察』中に『悪性ないし悪性疑い』が発見された症例の数は把握していない 」 (同年8月書面

求釈明の対象を福島県立医大付属病院における症例に限定した場合であっても、被告福島県において本訴訟における求釈明に対する対応として調査し、明らかにする余地はない」 (同年10月書面5頁)
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昨年8月の口頭弁論当日、弁論に先立って開かれた事前協議の場で、原告代理人からの質問、
症例の数の把握について、被告福島県はこれを
把握する義務があると考えているのか?
に対し、被告福島県の代理人曰く、
把握する義務はないと考えている。
と回答。ところが、そのすぐあとの公開法廷で、原告代理人が再び同じ質問をすると、今度は、被告福島県の代理人、先ほどの回答を翻して曰く、
把握する義務とは何を根拠とするのか明らかにしてほしい。その上で回答する、と。
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そこで、10月6日、原告から、被告福島県には症例数を把握する義務がある、その論拠を示した主張を提出→書面
なおかつ、この書面で以下を主張。
 白石草さんの報告によれば、既に、鈴木眞一らグループは県民健康調査の甲状腺検査に基つき、「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例のデータベースを作成、患者の手術サンプル 等の「組織バンク」を保管している。そこに上記の未公表の症例のデータも保存・管理されているから、福島県は既に症例数を知っている、この知っている未公表の症例数の公表せよ、と。 
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被告福島県の答弁(2017年10月)
福島県は、症例数を把握していない
その理由として、
福島県と鈴木眞一教授らの研究グループとは別の組織、別の主体であり、福島県はこの研究グループとは何の関わりもない」。それゆえ、この研究グループがどんな社会的使命を持ち、どんな目的で、どんな研究をしているか、福島県は知るよしもない(不知だ)。だから、この研究グループが症例数を把握していたとしても、福島県はこれを知るよしもないから。」
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このたび、この「あいた口がふさがらない東大話法」の被告福島県の主張に対して反論書面(準備書面(52))を提出。

【今回の主張のエッセンス】 
それは、単に、コモンセンスを「説明責任」という法の基本原理に基づき翻訳しただけのもの。
すなわち、
もともと、福島県民の健康を守ることを使命とする被告福島県は県民の健康に重大な影響を及ぼす疾病について、県民に対し、その疾病に関する情報の収集と分析をした上で、この結果を公開するという説明責任を負っている()。
それゆえ、被告福島県はこの説明責任に基づき、上記の症例数を把握し、県民に報告する義務があるのは当然である。
なおかつ、福島県と県立医大と鈴木眞一らグループとの間には症例数把握を示す、れっきとした記録が存在する。
にもかかわらず、その記録を無視し、 福島県の担当者の記憶に基づいて、
福島県は、症例数を把握していない
なととうそぶくのは、中央政府も地方政府も「国破れて記憶あり」の内部崩壊という姿を如実に示すもの以外の何ものでもない。
以下、4月13日、提出した上記書面の全文。 そのPDF-->こちら

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平成26年(行ウ)第8号ほか

原告  原告1-1ほか
被告  国ほか
                 

           準備書面(52)

        ――いわゆる経過観察問題(続き2)について――


                                         2018年 4月13日

福島地方裁判所民事部 御中        
                                                          原告ら訴訟代理人   柳 原  敏 夫


                                 同          井 戸  謙 一                                                ほか17名   

 本書面は、原告準備書面(33)――いわゆる経過観察問題について――及び同(43)に対する被告福島県の回答である準備書面(10)及び同(13)とりわけ県民健康調査の甲状腺検査における小児甲状腺がんの「悪性ないし悪性疑い」の症例数(以下、本件症例数という)を把握する義務について、被告福島県と別法人・別組織である福島県立医大・鈴木眞一研究チームとの関係を踏まえた原告主張である。

その際、論点を次の通り整理して論じる。
第1は、実体法上のレベルと訴訟法上のレベルを区別する。

第2は、実体法上のレベルについても、本件症例数の把握について、被告福島県に本件症例数を把握する義務があるか否かという法規範のレベルの問題と、被告福島県が本件症例数を把握しているか否かという事実のレベルの問題を区別する。

                      目 次
第1、実体法上のレベル①(法規範のレベルの問題)

1、問題の所在

2、説明責任とは何か

3、県民健康調査の甲状腺検査に関する被告福島県の説明責任

第2、実体法上のレベル②(事実のレベルの問題)

第3、訴訟法上のレベル



第1、実体法上のレベル①(法規範のレベルの問題)
1、問題の所在

 既に原告準備書面(43)で、被告福島県に本件症例数を把握する義務があることにつき、その根拠を、民法上の不作為不法行為の作為義務という観点から明らかにしたが、以下では、その根拠について、さらに被告福島県の説明責任(アカウンタビリティ)という観点からも本件症例数を把握する義務が導かれることを明らかにする。


2、説明責任とは何か
 それは憲法が宣言する国民主権原理からの論理必然的な帰結(コロラリー)である。すなわち、憲法前文[1]で宣言している通り、主権者である国民の信託を受けている政府は、国民に対して、自らの諸活動を説明する責務を負わなければならず、この責務が果たされない場合、主権者は「情報を与えられた市民」とはいえず、真の主権者とはいえない。アメリカ合衆国憲法の制定に携わった第4代大統領ジェームズ・マディソンは「人民が情報を持たず、それを取得する手段を有しないならば、人民による政府といっても、それは茶番か悲劇の始まりであり、おそらくその両者である」と述べたが、この言葉は国民主権を真に実効あらしめるために、政府の説明責任が不可欠であることを端的に表現している(同趣旨、宇賀克也「新・情報公開法の逐条解説〔第4版〕」18頁)。

 言うまでもなく、この説明責任は、日本政府と日本国民の関係だけではなく、地方公共団体と当該団体の住民との関係でも同様である。すなわち、主権者である住民の信託を受けている地方公共団体は、住民に対して、自らの諸活動を説明する責務を負う。

 その際、説明責任は政治的責任との対比の中で次のように定義されていることに注意する必要がある。

「一定の職務について説明すべき権限と義務とを排他的に引き受け、違法・不当な業務の遂行について、(必ずしも非難を受けることなく)適切な事後処理を行う責任である。」(小早川光郎編「情報公開法その理念と構造」13頁。下線は原告代理人)

 つまり、地方公共団体は、自らの諸活動を他の者では代えられないもっぱら己のみが独占的、排他的に説明するという重大な責務を住民に対し負っているのであり、それゆえ説明責任の怠慢は許されない。


3、県民健康調査の甲状腺検査に関する被告福島県の説明責任
 県民健康調査の実施主体は被告福島県であり、従って、被告福島県が、県民健康調査の1つである、事故当時18歳以下の県民を対象にした甲状腺検査に関する説明責任を負う。
 では、被告福島県は、甲状腺検査に関して、どの範囲、どんな内容の説明責任を負うか。

(1)、説明責任の範囲(一般論)

 説明責任は厳密に言うと、次の2つの義務から構成される(小早川光郎編「情報公開法その理念と構造」12頁)。
①.行政に関する情報を開示する義務
②.①の情報を前提にして、行政について説明し正当化する義務
 では、この2つの義務を、疾病に関する説明責任に当てはめるとどうなるか?

(2)、疾病に関する説明責任の範囲
 国民の健康に重大な影響を及ぼす疾病である感染症について、法は行政機関(国と地方公共団体)に一定の情報の作成(収集及び分析)と公開を義務付けている。それが感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律であり、同法16条1項で次の通り、感染症に関する説明責任の範囲を明らかにしている。

(情報の公表)
第十六条 厚生労働大臣及び都道府県知事は、第十二条から前条までの規定により収集した感染症に関する情報について分析を行い、感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報並びに当該感染症の予防及び治療に必要な情報を新聞、放送、インターネットその他適切な方法により積極的に公表しなければならない。

 

つまり、上記法律は感染症に関する説明責任として、
①. 開示義務を負う行政に関する情報として、
 ⓐ.感染症に関して収集した情報
 ⓑ.収集したⓐの情報を分析して得られた情報
の2つを挙げ、
②.①の情報を前提にして、行政について説明し正当化する行為として
感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報並びに当該感染症の予防及び治療に必要な情報を積極的に公表・解説、
の実施を定めている。

(3)、甲状腺検査に関する説明責任の有無及びその範囲
 以上に述べた、説明責任の原理・内容と感染症に関する具体的な説明責任の内容からすれば、原発事故後、福島県民の健康に重大な影響を及ぼす甲状腺疾病について、排他的に県民健康調査を実施する被告福島県に甲状腺検査の情報の作成(収集と分析)と公開を義務付けていると解すべきなのは当然である。

 すなわち、被告福島県は県民に対し、甲状腺検査に関する説明責任として、
①    開示義務を負う甲状腺検査に関する情報として、
 ⓐ.甲状腺検査に関して収集した情報
 ⓑ.収集したⓐの情報を分析して得られた情報
の2つがあり、
②    ①の情報を前提にして、甲状腺検査について説明し正当化する行為として
甲状腺検査結果の状況、甲状腺がんの動向及び原因に関する情報並びに甲状腺がんの予防及び治療に必要な情報を積極的に公表・解説、
の実施が求められる。

 そうだとすれば、甲状腺検査における小児甲状腺がんの「悪性ないし悪性疑い」の症例数(本件症例数)とは、上記①ⓐの甲状腺検査に関して収集した情報のうち、その重要性の点でも県民の関心の点でも最も高いものであり、本件症例数こそまさしく、県民健康調査に関して独占的、排他的に説明責任を負っている被告福島県が果たすべき開示義務の第1に挙げられる開示情報にほかならない。

(4)、甲状腺検査に関する被告福島県と福島県立医大の関係
 では、実際に県民健康調査の甲状腺検査をおこなっているのは被告福島県とは別法人である福島県立医大であるということを理由に、被告福島県は本件症例数に関する説明責任を免れるか。むろん免れる筈がない。理由は以下に述べる通りである

 県民健康調査の甲状腺検査を独占的に実施する権限と責任を負うのは被告福島県であり、福島県立医大ではない。他方、福島県立医大が甲状腺検査を実際におこなっているのはあくまでも被告福島県からの委託に基づき、いわば被告福島県の手足(受託者)として、甲状腺検査を代行しているからにほかならない。それゆえ、たとえ両者が別法人だとしても、甲状腺検査に関する限り福島県立医大は被告福島県の手足(受託者)として、甲状腺検査について被告福島県が負っている説明責任を十全に果たすために必要な行為をすべて行なう責任がある。つまりそれが上記①の甲状腺検査に関する情報の収集と分析及び②の公表・解説である。従って、二次検査で経過観察とされた者が引き続き福島県立医大に受診中に小児甲状腺がんの「悪性ないし悪性疑い」が判明した場合に当該情報を被告福島県に報告する義務を負うのは当然のことのみならず、福島県立医大以外の医療機関に受診した者の中から小児甲状腺がんの「悪性ないし悪性疑い」が判明した場合の情報についても、福島県立医大は当該医療機関に当該情報提供の要請をし、情報収集に努める義務を負っている。現に、2012年1月16日、被告福島県による排他的、一元的な甲状腺検査体制の確立を図るため、当時、山下俊一福島県立医大副学長と鈴木眞一福島県立医大教授は日本甲状腺学会会員宛に、甲状腺検査を受けた福島県の子どもたちのうち5mm以下の結節や20mm以下ののう胞が見っかった者の親子たちが、セカンドオピニオンを求めに来ても応じないように求める文書(甲C76)を出しており、これに比べれば上記情報提供の要請という義務の履行なぞ朝飯前のはずである。

 以上から、甲状腺検査を実際におこなっているのが別法人の福島県立医大であるということを理由に、被告福島県は本件症例数に関する説明責任を免れることはできない。

(5)、甲状腺検査データの分析に関する福島県立医大と鈴木研究グループの関係 
 ところで、被告福島県は、《鈴木眞一福島県立医大教授と山下俊一長崎大学副学長率いる長崎大学が提携して進める研究プロジェクトが本件症例数を把握しているから、福島県も当然、症例数を把握している》という原告主張(原告準備書面(43)2頁以下)に対して、《福島県と鈴木眞一教授らの研究グループとは別の組織、別の主体であり、福島県はこの研究グループとは何の関わりもない》(この「鈴木眞一教授らの研究グループを以下では、鈴木研究グループという)。それゆえ、鈴木研究グループがどんな社会的使命を持ち、どんな目的で、どんな研究をしているか、被告福島県は知るよしもない。だから、鈴木研究グループが症例数を把握していたとしても、福島県はこれを知るよしもない旨反論する(準備書面(13))。しかし、果してこの反論が通用するだろうか。むろん通用する筈がない。理由は以下に述べる通りである

 上記(3)(4頁)で前述した通り、被告福島県が県民に対し負っている甲状腺検査に関する説明責任の内容として、
①    開示義務を負う甲状腺検査に関する情報として、
 ⓐ.甲状腺検査に関して収集した情報
 ⓑ.収集したⓐの情報を分析して得られた情報
の2つがある。このうち、後者ⓑの「ⓐの情報を分析」の代表的なものが統計的分析(疫学的分析)及び分子生物学的分析(遺伝子解析)である(児玉龍彦「内部被曝の真実」第三部参照)。

 従って、2013年12月頃から、鈴木研究グループが甲状腺検査データと手術サンプルに基づきおこなった研究「小児甲状腺がんの分子生物学的特性の解明」(甲C73)、「若年者甲状腺がん発症関連遺伝子群の同定と発症機序の解明」(甲C74)(以上を総称して、本研究プロジェクトという)は甲状腺検査に関して収集した情報を分子生物学的に分析することである。それゆえ、その分析結果は、本来であれば、被告福島県が県民に対し甲状腺検査に関する説明責任の内容として開示すべき情報の1つである上記ⓑ.「収集した情報を分析して得られた情報」に該当する。従って、鈴木研究グループが福島県立医大に申請した、甲状腺検査データと手術サンプルを使った本研究プロジェクトは、本来、福島県が実施すべき「甲状腺検査に関して収集した情報の分析」を鈴木研究グループが福島県から委託を受けて福島県の手足(受託者)として行なう性格のものと解すべきである。なぜなら、もともと甲状腺検査に関する説明責任は福島県が独占的、排他的に権限と義務を負っているものであり、第三者に移転することが許されないものであり、それゆえ、「甲状腺検査に関して収集した情報の分析」もまた福島県が独占的、排他的に権限と義務を負っているものだからである。従って、「甲状腺検査に関して収集した情報の分子生物学的分析」結果の情報はすべて福島県が把握できるように、福島県の手足として当該分析を担当した鈴木研究グループは分析結果をすべて福島県に報告する義務がある。

第2、実体法上のレベル②(事実のレベルの問題)
 以上から明らかな通り、鈴木研究グループが担当した本研究プロジェクトの中で得られた「甲状腺検査に関して収集した情報の分子生物学的分析」結果の情報はすべて福島県は鈴木研究グループから報告を受けており、従って、本研究プロジェクトが把握した本件症例数を福島県も把握している。
 従って、たとえ鈴木研究グループが本件症例数を把握していたとしても、福島県はこれを知るよしもない旨の被告福島県の反論は成立する余地がない。

第3、訴訟法上のレベル
 以上の説明責任の検討は実体法上のレベルの議論である。そこで、この説明責任について訴訟法上どう解すべきか。

 この点、結論は実体法上の場合と変わらない。つまり、実体法上説明責任を負っている行政機関は訴訟法上も同様に、というより、実体法上のときよりも、一層強く説明責任を負うと解すべきである。なぜなら、本来、司法の場とは国民にとって人権の最後の砦とされる特別な場であるが、司法以外の場で、すでに国民主権の論理必然の帰結として説明責任が行政過程における基本原理とされているのであれば、人権の砦とされる司法の場で国民主権の帰結である説明責任が一層強固に貫徹されるべきことは理の当然だからである。

また、当事者対等の原則という民事訴訟法の古典的な原理も現代においては、実質的対等の原則として再構成されるべきであり、その場合には、情報を独占する行政機関に一層強く説明責任を負わせるのがこの実質的対等の原則により合致する適正な解釈だからである。

第4、結語
 以上から、被告福島県は従前の主張を撤回し、速やかに本件症例数を本法廷に提出すべきである。
                                                                                                  以 上






[1]そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。
 

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